酒田五法

酒田五法

FXでトレードをする時はローソク足のチャートにインジケーターを入れて、テクニカル分析でトレードをしている方も多いと思います。何気なく行っているこのテクニカル分析ですが、一体、いつ作られて誰が考案したものなのか、勉強していきましょう。

今回は、テクニカル分析の創始者であり、「相場の神様」とも呼ばれる本間宗久について調べてみました。

テクニカル分析の創始者「本間宗久」

江戸時代後期の1724年、出羽国庄内(現在の山形県酒田市)に当時日本一の大地主と言われていた本間家の初代当主の5男として生まれます。庄内は出羽米(現在の庄内米)の一大産地であり、二代目当主となった兄から営業を託されたことをきっかけに米相場の世界へ足を踏み入れます。これが宗久と投資の運命的な出会いになりました。
とにかく米相場の研究をはじめた宗久。当時の本間家は地元で非常に有名な豪農であり、天候や作柄状況に関する情報がリアルタイムで簡単に手に入りました。さらに長期に渡って集計したデータをもとに作成した農凶予測により、相場の連勝記録を築いていきます。研究の結果をしっかりと実績に移した宗久は、非常に早いスピードで巨万の富を得たそうです。

その後、甥の光丘が三代目当主となると、大量の出羽米を売り出しながら大阪・京都の米相場に挑戦します。そこでも天才的な相場を読む力を発揮した宗久は関西市場をも席巻。こうして「出羽の天狗」や「相場の神様」とも称されるようになり、一躍その名を轟かせました。
山形の田舎から都会へ出てきて大成功を収め、まさに成り上がり街道まっしぐらな宗久は、さらなる高みを目指して、ついに江戸へ進出します。しかしながら、宗久はここで大きな失敗を経験することになります。なんと、江戸の米相場で全財産を失ってしまうのです。今まで負け知らずだった宗久がなぜ・・・。

当時、本人が残した言葉があります。
腹立ち売り、腹立ち買い、決してすべからず大いに慎むべし。」
冷静さを保てない状態で相場に手を出せば必ず失敗する、と自身を戒めています。これは相場だけではなく様々なことに必要な考え方ではないでしょうか。感情的になってしまっているときほどきちんと考えが自分自身に落とし込めずに、間違った決断をしてしまいがちですよね。ここで一歩、踏みとどまれるかで、未来が大きく変わることもあるので、この宗久の言葉には非常に重みを感じます。

江戸での大失敗から学びを得た宗久は再び初心に戻り、相場の研究に没頭します。そうして相場の必勝法を編み出し、再び関西の米相場で大成功を収めます。また、苦い思い出が残る江戸の米相場にも再度チャレンジし、連戦連勝を重ねました。このようにして生まれたのが、あの有名な「酒田五法」です。

酒田五法とは?

酒田五法とは、江戸時代に山形県酒田出身の天才相場師『本間宗久』によって編み出された相場の分析方法なのです。5つの基本チャートパターンがありますので、ひとつづつ見ていきましょう。

三山(さんざん)

三山(さんざん)は別名「トリプルトップ」とも呼ばれ、上図のように相場が3つの山を形成し、上昇相場の天井を付けて下落相場に移り変わるローソク足の動きになります。
3つの山の真ん中の山が一番高いパターンを特に三尊(さんぞん)といいます。3つの山を結んだ線を天井(てんじょう)といい、相場が天井を抜くことはもうないだろう、という分析から売り、という活用法になります。

三川(さんせん)

三川(さんせん)は、三山の逆で上昇トレンド突入のシグナルとなります。
別名「トリプルボトム」とも呼ばれ、相場が底値を3回タッチしたら、その後は上昇トレンドに移り変わるという考え方になります。
3つの谷の真ん中の谷が一番低いパターンを特に逆三尊(ぎゃくさんぞん)といいます。

3つの谷を結んだ線を底(そこ)といい、相場の底が抜けることはもうないだろう、という分析から買い、という活用法になります。

三空(さんくう)

4つのローソク足が前のローソク足にかぶらずに、空きができた時の形です。ローソク足の上昇時に3つ「空」が現れた場合は、非常に強い売りの勢いが相場で起こっているということが読み取れます。相場の高値圏で、4本の陽線と3つの上方向の空が連続するパターンを、三空踏み上げ(さんくうふみあげ)といいます。

安値圏で、4本の陰線と3つの下方向の空が連続するパターンを、三空叩き込み(さんくうたたきこみ)といいます。
強烈な売り材料が出ていることが多いので、実際にやるのはかなり怖いものなのですが、勇気を出して、逆張りの買い!というパターンです。

三兵(さんぺい)

連続する3本の陽線、あるいは陰線を三兵といいます。相場の安値圏で、3本の連続した陽線が出るパターンを赤三兵(あかさんぺい)といいます。
陽線は、白または赤でチャートに記入するのが基本なので、この名前になっています。
陽線の基本的な考え方を理解していれば、底値圏で3本連続の陽線が出現するパターンが買いの基本パターンの1つになることは、理解できると思います。
強い相場についていく順張りの買いのパターンとして活用します。

相場の高値圏で、3つの連続した陰線が出るパターンを黒三兵(くろさんぺい)といいます。
陰線は、黒でチャートに記入するのが基本なので、この名前になっています。
黒を烏(カラス)に例えて、三羽烏(さんばがらす)ということもあります。
高値圏からの下落を示唆する不吉なパターンを三羽の烏(カラス)に例えた名前です。
江戸時代の米相場が激しく動いていことを示唆するネーミングセンスです。
弱い相場についていく順張りの売りのパターンで活用します。

また、売りの強い抵抗を示唆する長い上ヒゲが、2本目と3本目の陽線についていると、赤三兵の買いパターンが失敗する可能性もある、という示唆になります。
このパターンを赤三兵の先詰まり(あかさんぺいのさきづまり)、といいます。

三法(さんぽう)

三法は、レンジ相場では取引を休み、相場がレンジから離れて動き出したら、動いた方向に仕掛ける、というブレイクアウトの順張りのパターン分析になります。
レンジ相場という概念が、江戸時代からあったことの証左であり、その先進性には驚くばかりです。

レンジ相場では取引を休み、相場がレンジ相場の高値を明確に上に抜けたら、買いで仕掛けるというパターンを、上げ三法(あげさんぽう)、といいます。

レンジ相場では取引を休み、相場がレンジ相場の安値を明確に下に抜けたら、売りで仕掛けるというパターンを、下げ三法(さげさんぽう)、といいます。

以上が酒田五法です!世界的に投資教育が遅れていると言われているこの日本に、江戸時代から現在の相場でも通用するテクニカル分析が存在していたなんて、本当に驚きです。本間宗久という人物がどれほど偉大な存在であったか、この酒田五法から理解することができます。皆様方が取引される際にテクニカル分析での実践において、酒田五法をお役立てください

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